2006年5月23日

Chan's Song - 映画「'ROUND MIDNIGHT」

Jazzに関する映画ってかなり観てきたつもりではあるものの、強烈な印象を受けたものはあまり多くない。
ジャズ・ミュージシャンの伝記ものって、その題材となるミュージシャンの人生の暗い部分が強調されていて、観ていて滅入ってしまうケースすらある。
そういう面では、チャーリー・パーカーものの「Bird」、チェット・ベーカーもののドキュメンタリー(タイトル失念)などは、哀しさが先行してあまり楽しめない。

1986年の映画「ラウンド・ミッドナイト」は、数あるジャズ映画のなかでも群を抜くと思っている作品で、主演のデクスター・ゴードンや共演のハービー・ハンコック等を含め、本物の一流ミュージシャンが出演しているからか、かなりのリアリティを持って観ることができる。
この映画の4年後に亡くなったデクスター・ゴードンの演技が妙にはまっていて、アカデミー賞にノミネートされたというオマケまでついたワケは、映画を観れば納得。
けだるさというか、イラつくくらいスローな台詞まわしがかもし出す雰囲気。
実に上手い(笑)。

フランス人のファンとジャズ・ミュージシャとの心の交流を描いたストーリーも良いし、映画の中で演奏されているトラックもジャズファンなら唸る人が多いんじゃないかな・・・。
特に「As Time Goes By」のゴードンの極太のテナーサックスは、生き方が下手なジャズ・ミュージシャンの生き様を表現しているようで、感動的ですらある。

この映画のエンディングに流れる「Chan's Song」というのは、ハービー・ハンコックとスティーヴィー・ワンダーという異色のコンビによる名曲。
メロディの美しさたるや、一度聴いたら忘れられない。
ヴォーカルというより、演奏と言っていいメロディまわしをボビー・マクファーリンが担当している。
この人、「Don't Worry, Be Happy」の大ヒットで有名だが、その曲が彼の代名詞になるのはあまりにもったいない気がする。

ジャズを知らない人が観ても感動できる映画だと思うし、サウンドトラック盤はChan's Song一曲だけでも価値があるんじゃないだろうか。

2006年5月19日

Al Jarreau - This Time


Al Jarreauというのはもう四半世紀の間、ずっと僕のフェイヴァリット・ヴォーカリストの一人であるのだけれど、彼のアルバムの中で何が一番好きだろう?と自分に問うても、かなり迷ってしまう。
80年代のAOR全盛期に繰り出された"This Time"から"L Is for Lover"まではまったく甲乙つけがたく、94年の"Tenderness"は、クオリティの面で彼のピークではないかと思う。
(Tendernessについては懐かしのレーザーディスクで持っているものの、プレーヤー故障のために再生できず。 早くDVDにならないかな・・・。)
個人的にという面では、アル・ジャロウに最初に遭遇した"This Time"が一番のお気に入りになるかな。

"This Time"というアルバム、猫も杓子もSpainの名演ばかりが取りざたされる傾向がある。
確かにこのSpainは凄い!
何度聴いても飽きないし、バックミュージシャンもそれぞれが最高のプレーで、アル・ジャロウのヴォーカルに応酬している。
特にSteve Gadd。
Gaddのドラミングって、テクニックの面で今の超絶ドラマーの影に潜んじゃう部分があるのだけど、歌もののバックではやはり最高のドラマーの一人じゃないかな。
Spainでのドラミングは最初から最後までかっこいい。
あとはLarry Williamsのキーボード。
この人、Saxソロもバリバリなのに、"天は二物を与えちゃったのね"というくらい、この曲のローズのバッキングとシンセソロがキマりにキマってる。

特に僕が好きなのは、4曲目のAlonzo。
テクニカルなスキャットが得意中の得意で、「歌う楽器」とまで言われたアル・ジャロウが、その対極にある伸びやかなヴォーカルで歌い上げてる。
個人的にLook to the Rainbowというライヴアルバムの、Letter Perfect、Rainbow in Your Eyesなどの雰囲気が大好きなのだが、Alonzoのヴォーカルは伸びやか感でそれらに匹敵する。

多分、アル・ジャロウはずっと聴き続けるでしょう。

2006年5月13日

Claus Ogerman / Michael Brecker - Cityscape

Cityscapeこれはやばい! 完璧にハマってしまった。
音楽の選択なら全幅の信頼を置く友人のブログで推薦されていて、思わず棚から引っ張り出して、久しぶりに聴いてみた、クラウス・オガーマンとマイケル・ブレッカーのCityscapeというアルバム。
結果は、オガーマンとブレッカーに完全にノックアウトされてしまった・・・。
作編曲は全てオガーマンで、その素晴らしいオーケストレーションの上で、マイケル・ブレッカーが奔放にテナーを吹きまくる。
聴き手である僕の完敗。
特に3曲目の「Nightwings」という曲。
ゆったりとした弦の始まりから、フォービートに移行するあたりは非常にスリリング。
この2週間くらい、PCのWinampでかけてるアルバムはほぼこの1枚。
こんなにローテーションするアルバムも、自分でも珍しいと思うほど。
Amazonのレビューなんかでは、「寝る前に聴くといい」なんて評があるみたいだけど、こんな演奏聴かされたら、とてもじゃないけど寝られませんw
演奏だけではなく、ひとつのアルバム作品として、質が高すぎると思えるほど。
強力にお勧めできるCDです。

2006年5月 6日

ビル・エヴァンス - The Universal Mind of Bill Evans (DVD)

The Universal Mind of Bill Evansビル・エヴァンスの「ザ・ユニヴァーサル・マインド・オブ・ビル・エヴァンス」がDVD化され、先月21日に発売された。
IMBbでは、オリジナルが1966年の作品ということになってます。
何せこの人、早くに亡くなったために、メージャーなわりに映像が少なく、”動くエヴァンス”を確認するのには貴重なDVDと言えるはず。
しかし、寡黙にピアノに向かい合う印象が強いだけに、これだけ饒舌なエヴァンスも新鮮かも。
この饒舌さは、マリアン・マクパートランドのPIANO JAZZという番組に出演した模様が録音され、後にファンタシー・レコードからCD化されたものと匹敵する気がする。

兄のハリー・エヴァンスとの対話を中心として、JAZZやピアノ、音楽教育へのアプローチ、ひいては哲学的な部分まで言及していて、内容としては興味深い。
「STAR EYES」を題材にして、単純なメロディから即興演奏までのプロセスを具体的に見せるくだりは、痺れるくらいカッコイイ。

当のエヴァンス、左の前の歯が一本抜けてます。
大口を開けて笑った写真がないのは、薬の影響などで歯がそろった事がほとんどないからというエヴァンスですが、カメラもそんなエヴァンスを、歯のない部分がはっきり確認できる左前から撮っていて、逆方向から撮ればいいのに・・・と、お節介なことまで考えてしまったり(笑)。

エヴァンスの数少ない映像を全てDVD化して欲しいと願うこと、しきりです。