2007年5月29日

3人のピアニスト ~ それぞれの”Solar”

Solarという曲。
もともとマイルス・デイヴィス作曲によるものだが、彼自身の演奏にはそれほど強い興味がなく、好きなピアニストの演奏についつい耳が行く。

まずは何といってもビル・エヴァンス。

Sunday At The Village Vanguard
Bill Evans - Sunday At The Village Vanguard

1961年6月25日に行われた、伝説的なヴィレッジ・ヴァンガードでのライヴ録音である。
キース・ジャレットが「Tribute 」というアルバムのなかで、ビル・エヴァンスにささげる形でSolarを演奏しているが、キースもこのエヴァンスの演奏に相当インパクトを受けた証だろう。
この1961年という時期・時代に、このような破天荒な演奏をしたこと自体、かなり実験的かつ前衛的な試みじゃなかっただろうか。
このテイクは後のフリージャズに通ずる奔放な演奏なのだが、ともすればバラバラになりがちな楽器ごとの独自なパフォーマンスが、妙に一体感を持って聴けるところが素晴しい。
よくこのトリオのことを正三角形と表現されるが、まさにピアノ、ベース、ドラムが対等な関係でバランスが取れている。


お次はキース・ジャレット。
彼はこのSolarという曲をインプロヴィゼーションの素材として使用する傾向があるらしく、所持しているCDのなかでも「Tribute」、「At the Deer Head Inn」の2テイクを愛聴している。
Deer Head Innのほうは、ドラムがエヴァンス・トリオで前述の「Sunday At The Village Vanguard」の三角形の一辺であった、ポール・モーシャン(モチアンじゃない)という因縁めいた組み合わせ。
どちらかというと、「Tribute」のほうが好きだけど、実はキースのSolarのなかで一番のお気に入りは、DVDになっている「ソング・ブック ライヴ・アット・サントリー・ホール’87」のテイク。

Keith Jarrett - Solo Tribute
Keith Jarrett - Solo Tribute (邦題:ソング・ブック ライヴ・アット・サントリー・ホール’87)

ソロだからやりたい放題なのだが、途中でバロックっぽい弾きまわしが聴けるなど、このキースもかなり熱い。


最後はブラッド・メルドー。

Brad Mehldau - The Art of the Trio, Vol. 4: Back at the Vanguard
Brad Mehldau - The Art of the Trio, Vol. 4: Back at the Vanguard

ビル・エヴァンスのパフォーマンスから28年後、このSolarという曲を、エヴァンスと同じヴィレッジ・ヴァンガードでライブ録音している。
メルドーのSolarも、これまた凄い。
冒頭はリラックスしたタッチなのだが、中盤から後半にかけて、縦横無尽に展開される右手に加え、左手のコードが徐々に分厚くなっていく。
次第に熱くなっていくメルドーが、あたかもそこに居るような感じでわかる。
この気迫を感じさせるSolarが、僕の最近の一番のお気に入りなんだなぁ。

僕がこの3人に飽きてしまうことはありえないのだが、機会をみて他のパフォーマーのSolarも、是非聴いてみたい。

2007年5月24日

Todd Rundgren - A Cappella Tour

todd rundgren - a cappella tour大昔からトッドのファンだったので、嫌いなアルバムなど存在しないのだが、このアルバムは一度聴いただけで素直に好きになった。
自分の声のみを多重録音を駆使して作った「ア・カペラ」というアルバムを聴いた当時、よくもまぁこんな(と言っては失礼だが)アルバムを作ったもんだなぁと関心したものだ。
このライヴはその「ア・カペラ」をリリースした直後の1985年10月31日、テキサス州ダラスでの録音。
トッドの音楽、特にこういうコーラスは、ビートルズ、ビーチボーイズから、ジャンルで言えばロック、ドゥーワップ、R&B、ゴスペルなど、いろんな音楽が融和したものだと思うのだが、彼はそういうものを彼のメロディとヴォーカルで変換し、通訳して聴かせてくれるところがいい。

このライヴに収録される音は、一部に楽器の伴奏があるものの、そのほとんど全てが人間の声で表現されている。
大合唱団のハーモニーによるパフォーマンス。
それがまた本当に力強く、時にメロディアスなのである。

コーラスで特筆すべきな曲は「Johnee Jingo」、「Pretending To Care 」、「Can We Still Be Friends 」、「Mighty Love」、「Real Man」あたり。
「Mercy Mercy Me」の導入部なんて、まじでゾクっ!とする格好良さ。
トッドを聴く1枚目としては薦めないが、聴いたら好きになる人はきっと多いはず。


Todd Rundgren - A Cappella Tour

1. Born To Synthesize
2. Love Of The Common Man
3. Cliche
4. Too Far Gone
5. Songs Of The Viking
6. Johnee Jingo
7. Blue Orpheus
8. Pretending To Care
9. Hodja
10. Lost Horizon~What’s Going On~Mercy Mercy Me~I Want You
11. Tiny Demons
12. Lord Chancellor’s Nightmare Song
13. Honest Work
14. It Wouldn’t Have Made Any Difference
15. Can We Still Be Friends
16. Bang On The Drum
17. I’m So Proud~Ooh Baby Baby~La La Means I Love You~I Saw The Light
18. Mighty Love
19. Something To Fall Back On
20. Real Man
21. Love Is The Answer


2007年5月17日

Randy Brecker w/Michael Brecker - Some Skunk Funk

some_skunk_funk.jpg名義はランディー・ブレッカーとなっているが、実質的にはブレッカー・ブラザースの、2003年11月録音のライヴ盤。
全10曲だが、タイトル曲やSponge、オハコのSong For Barryなど馴染みの曲も多く、入っていくのにほとんど構えが要らなかった。

主なメンツは、
Randy Brecker: trumpet
Michael Brecker: Tenor Saxophone
Jim Beard: Keyboards
Will Lee: Bass
Peter Erskine: Drums
The WDR Big Band Köln, arranged and conducted by Vince Mendoza

ピーター・アースキン、ウィル・リーなど、実力的に十分なメンバーとビッグバンドを従えて、かなりワイルドな演奏になっている。
アースキンの実力は疑う余地もないが、僕はウィル・リーをナメていた。
どうしても学生時代に聴いた24丁目バンドの印象が強くて・・・。
このアルバムで聴けるウィル・リーのベースはネバネバ粘っこくていい。

マイケル・ブレッカーは晩年、ビッグ・バンドというフォーマットがかなり気に入っていたという記事を読んだが、このライヴで聴けるVince Mendoza率いるThe WDR Big Band Kölnもすばらしい。
特にVince Mendozaの編曲!
特に”Strap-Hangin'”のマイケルとランディーのソロ終わりに絡んでくるホーンセクションの格好よさって言ったら、もうたまらない。
以前書いた記事で、GRP All-Star Big Bandの編曲をしたMichael Abeneでも触れたが、ビッグバンドの編曲をここまでやっちゃう人って、もう天才としか言いようがない気がする。
Freefallの編曲を聴いていも、つくづくそう思う。

目下、ヘビー・ローテーションはStrap-Hangin'。
マイケルのソロもかなりいいが、それにも増してこの曲のランディのソロは格別だ。
同名のDVDも発売予定。
これもかなり楽しみだ。


Randy Brecker w/Michael Brecker - Some Skunk Funk

1. Some Skunk Funk
2. Sponge
3. Shanghigh
4. Wayne Out
5. And Then She Wept
6. Strap-Hangin'
7. Let It Go
8. Freefall
9. Levitate
10. Song for Barry


2007年5月 1日

Pat Metheny - 80/81

Pat Metheny - 80/812枚組みの力作である。
パット・メセニーといえば、僕のお気に入りのピアニストであり、彼の長年のパートナーであるライル・メイズが”必ず付いてくる”というのがお約束なのであるが、なんとこのアルバムにはキーボード・プレーヤーが参加していない。
そういう意味でも興味深い一作。
ちなみに、これも愛聴盤である、ジョニ・ミッチェルのシャドウズ・アンド・ライトとほぼ同時期のもの。

パット・メセニーのリーダー・アルバムを聴く姿勢としては不謹慎ながら、このアルバムの個人的な最大の聴き所は、2枚目の3曲目(トータルで7曲目)、"Every Day (I Thank You)"のマイケル・ブレッカーである。
このブログでも何回か書いてきたが、とにかくマイケルは僕の最も好きなサキソフォン・プレーヤーであるから、どうしても耳が行ってしまうのは避け難いのである。
この曲のマイケルは、非常に伸びやか、かつ優雅で、素敵なコード進行のなかで気持ちよ~く吹いている。
最初聴いたときは、1曲目がかなりアウトな奏法だけに、気持ちが入っていけるか少々心細くなったものだが、この曲でにたどり着くと、アルバムがすんなり耳に入ってくると同時に、マイケルってやっぱりいいなぁと再認識してしまう。
マイケル・ブレッカーとして、最高の演奏の部類に入るんじゃないかな。
今年の1月、亡くなったマイケルの追悼式で、パット・メセニーが1,600人もの参列者を前に、この曲を弾いたそうである。
マイケルとパットはこの語も何度も共演しているが、この曲にはやはり思い入れがあったのだろうな。

あとはチャーリー・ヘイデンのベースがいい。
ジャック・ディジョネットのドラムって、今までキースのトリオものを含めて何百回と聴いているのだが、いまだにその良さが腹に落ちてこない。
パット君、失礼!
キミのギターも心地よいのだが、"Every Day"ばっかり聴いているので、まだ影が薄い状態です。


Pat Metheny - 80/81

1. Two Folk Songs
2. 80/81
3. Bat
4. Turnaround

5. Open
6. Pretty Scattered
7. Every Day (I Thank You)
8. Goin' Ahead


Musicians:

Pat Metheny (guitar)
Charlie Haden (bass)
Jack DeJohnette (drums)
Dewey Redman (sax)
Michael Brecker (sax)